弁護士の敷居の高さの正体は?

 

先日、広島市で開催された、日本弁護士連合会(日弁連)主催の「中小企業関連団体との意見交換会」という協議会に出席してまいりました。この協議会は、弁護士会の中小企業支援施策の説明と、それに対して商工会議所や商工会の経営指導員の方や実際の経営者の方から意見を言っていただき、中小企業支援についてのあるべき姿について意見交換するという会です。6年前から全国各地の地方都市を中心として開催され、北は北海道釧路、南は沖縄まで今回の広島で19ヶ所目になりました。私は、日弁連の担当弁護士として19ヶ所全ての協議会に参加させていただいております。地方開催が多いので、私は地方の弁護士の代表のような形で声がかかっております。

 さて、今回の協議会では、経営指導員や経営者の方から何度となく「弁護士さんは敷居が高いから…」というご意見が出ました。確かに、我々弁護士は何度となく敷居が高いと言われ、その敷居を下げる努力をしてきたつもりです。

 ただ、「敷居の高さ」の内容、正体について真剣に分析してみたことがあったのかといえば疑問があるところです。今回はその中身についても踏み込んだ議論がなされました。

敷居の高さの正体としては以下の3つが挙げられると思います。まず、①弁護士に知り合いがおらず、気軽に相談できない、弁護士の顔が見えない、という点です。次に、②弁護士の料金が不透明なため、「時価」の寿司屋みたいで気軽には近寄れない点。さらに、③「こういうことを弁護士に相談していいのか分からない、何を相談していいのか分からない。」、つまり弁護士の業務分野が分かりにくいという点が挙げられます。

 

ワシ、井上弁護士やったら、よ~知ってまっせ!

 

①の弁護士が縁遠いという点については、確かに以前はそのようなところがあったのかも知れませんが、最近は弁護士の数が激増したことに伴い、弁護士の広告宣伝の機会が増えたり、人前に出る弁護士も増えたことから、かなり緩和されてきたのではないでしょうか。

 

弁護士に頼んだら、なんぼとられるんやろか?

 

②の料金が不明確という点については、確かに頭の痛いところで、分かっているけど明確化できない部分です。というのは、我々弁護士は物を売る商売ではなく、各クライアント様に応じてオーダーメイドでサービスをご提供するので、その事件ごと、クライアント様ごとに業務内容が変わってきます。ですので、相談前から予め、「このサービスはいくらですよ」とはっきり開示することは難しい面があります。お話しを聴かせていただいて初めて業務内容が明らかになり、料金を出せるようになります。まずはご相談に来ていただいてそこから料金のご提示をさせていただくことになります。

とはいえ、定型的な業務であれば、ほぼ金額も決まっておりますし世間一般に開示されている相場感というのはありますので、私共も可能な限り開示させていただきたいと思っております。

また、料金が分からなくても、顔を知っている弁護士であれば、「井上さん、離婚の相談なんだけどなんぼくらいかかるのよ?」と言い易い部分があり、この点は上記①の弁護士の顔の広さや人脈が敷居を下げることにつながるのではないかと考えております。

 

こんなこと弁護士に相談してよかったんだ!

 

 最後に、③の弁護士の業務分野が分からないという点です。世間の方々からすると、一部の例外はあるにせよ「裁判業務は弁護士の専権事項だ。」という点はお分かりかと思います。ただ、最近は弁護士の業務も裁判以外の分野に広がりをみせており、弁護士の側からみると、「これは弁護士の仕事だ。」というものでも、世間からすると、「これを弁護士に相談してよかったんだ。」というものが増えており、そこにズレが生まれているのだと思います。

例えば、クレーマー対策や、最近では三菱自動車などの企業の不祥事が発生した時の危機管理・対応という業務は、一部ではコンサルタントなどの業務と考えておられる方もいますが、これはまさに弁護士の業務です。

こういう事件の解決は、まずは事実を調査し認定することから始まりますが、錯綜している事実関係を整理し、「調査の結果、事実はこうです。」と論理的に説明する能力は専門的トレーニングを受けてきた弁護士が秀でています。

そして確定した事実関係をもとに、法律はどうなっているか、さらに法律違反がなくても「確かにこの食品の偽装は、食品表示法などの法律には違反していません。しかし、偽装に対する社会的非難が高まっている社会情勢を考えると、この偽装は、世の中から見ていけないことではないでしょうか。」、と企業の内輪の論理ではなく、社会的観点から考えて企業を人間として正しい方向に導く作業も弁護士の業務領域に入ってくると思います。

 

企業のホームロイヤーとして

 

当事務所では、法人様向け業務案内のパンフレットを作成したり、毎月1回顧問先様限定で事務所報を発行したり、ホームページを充実させたりと、当事務所の業務範囲、領域を出来る限り皆様に広報させていただいているつもりではあります。

ただ、まだまだ広報が十分では部分もあるかもしれません。当事務所では、顧問先企業様の危機状態に迅速かつ適切に対応することはもちろんですが、医者に例えるのなら、「かかりつけ医」のように、日々の企業の健康診断、さらに軽い風邪を早期に治療して大事に至らないようお供させていただき企業にとってのホームロイヤーとしてお仕事をさせていただきたいと考えております。 そのための努力を日々怠らないようにしていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

弁護士の敷居の高さの正体は?