みなさんこんにちは。
山陰はここのところ天気が安定せず、さらに今週は毎日のように雨の予報ですね。こうして冬支度をしていくのでしょう。私が初めて松江に来た年は、11月中旬から毎日のように暗く冷たい雨が降り続き、衝撃を受けたのを覚えています。大阪では、普通に晴れていますから。翌年以降は、11月中旬以降に雨が降り続いても、蟹と同じように山陰の冬の風物詩として受け入れることができるようになりました。大山の紅葉もかなり散っており、空がドンヨリしています。
さて、11月8日は、山陰とうって変っていいお天気の関西地方は神戸市のポートピアホテルで、第18回弁護士業務改革シンポジウムが開催され、私も参加してきました。私は運営委員をしているので、普通に出席するだけでなく、各種お世話もしなければなりません。
業務改革シンポジウムは、2年に一回開催され、弁護士業務を改善、改革していくための各種提言や業務改善のための啓蒙、新分野開発に向けた研究成果の発表などを行うものです。
私は、弁護士になって以降、札幌、松山、横浜、そして今回の神戸と毎回参加しており、松山シンポ以降は運営側にかかわっております。
過去のシンポジウムの内容は下記をご覧ください。
松山
https://www.inoue-haruo.com/info/info_dsp.cgi?mode=0&no=00007
横浜
https://www.inoue-haruo.com/info/info_dsp.cgi?mode=0&no=00221
さて、今回のシンポジウムでは7つの分科会があり、私は、
第2分科会 スポーツ基本法と弁護士の役割~体罰・セクハラ・スポーツ事故の防止 グッドガバナンスのために~
の運営に携わりました。
スポーツ界では、2020年の東京オリンピック開催が決まり盛り上がっている反面、桜宮高校バスケ部の体罰・自殺事件や女子柔道の体罰事件などの不祥事が後を絶ちません。
今回は、スポーツ界における不祥事にメスを入れ、スポーツ界にもグッドガバナンス(組織統治)、コンプライアンス(法令遵守)の観点を浸透させようという目的で分科会を立ち上げております。企業においてもコンプライアンスの遵守が言われて久しいですが、企業に限らず、スポーツ界にも同様にコンプライアンスの観点が必要なのです。もちろん、企業においてコンプライアンス違反が後を絶たない状況で、スポーツ界にそうそう簡単に浸透するといかないでしょうが、そのような観点を導入することから始めていかないと進みません。
パネルディスカッションでは、元サッカー日本代表の福田正博氏や、バルセロナオリンピック女子柔道銀メダリストの溝口紀子氏、さらに文科省のお役人などの現場の方や組織を管理する立場の方など各方面のトップの方々にお話しいただきました。写真でマイクを持っているのは福田氏です。
福田氏は、指導者とプレーヤーは別で(たとえばサッカー日本代表のザッケローニ監督は17歳くらいまでしか選手経験がないそうです)、経験だけで指導していくのは危険だとのことでした。指導者には情熱に加えて、指導者としての知識・考え方が必要で、名プレーヤーでも指導者としての知識や経験を謙虚な姿勢で学ぶことが必要とのことでした。
また、情熱のない指導者は論外だが、情熱だけでは間違いを起こしてしまう。自分の情熱が選手に浸透しないときに、焦りやイライラ感もあり、自分たちは「殴られて教わってきた」という感覚も手伝って、つい手が出てしまうとか。
殴らずに、選手と思いを共有できるようにするにはどうしていったらいいのか、非常に難しい問題です。
これは実は、スポーツ界に限らず、たとえば、企業において最近、パワハラが盛んに問題になっています。これも、パワハラをする上司からすれば、部下に会社や自分の思いが伝わらず、その思いを伝えて会社をよくしていきたいという気持ちが強すぎて、部下をよくする手段としてついついパワハラと呼ばれる行為に及んでしまっているように思います。体罰やパワハラと言われることをせずに、いかにして組織をまとめていけるのか、これからの日本社会において、組織をまとめる者の腕の見せ所です。
また、今回は高校野球の現場指導者からもパネリストをということで、東京の開成高校の青木監督にも登壇していただきました。開成高校は東大合格者数全国1位で言わずと知れた進学校ですが、数年前には東京大会でベスト16まで進まれたそうです。現場に携わる方として本当に示唆に富むお話をいただきました。
ちょっとネタ的な話になってしまいますが、カイセイ違いで(笑)、島根の開星高校の野々村前監督にもパネリストとして登壇していただくと面白いお話がきけたかもしれませんね。「ヤクザ監督」の視点からの教育論・指導者論を展開していただくとか面白かったと思います。
ポートピアホテルからみた神戸の景色です。
今回のシンポジウムでは、私が興味があったのは、民事信託について扱った第6分科会、中小企業の海外展開支援について扱った第7分科会です。
民事信託については、現行法のもとでは制約が多く弁護士が扱うのは難しいですが、高齢者の財産を管理し、高齢者の自分の思いを実現するためには、成年後見制度や財産管理契約と並んで、有用な手段だと思います。民事信託のみというのではなく、財産管理や成年後見の各制度と併用しながら高齢者を支援する一つのオプションとして活用できる時代がくればいいなと思います。
中小企業の海外展開についても、島根で活動する弁護士にとっても念頭にいれておかねばならない分野です。現に、私の顧問先でも海外進出している企業がいくつかありますから。
言葉の問題、法制度の問題、各国の文化や商慣習の違いなど色々クリアしなければならないことがありますが、やらなければならないことだと考えております。
いつもながら、実りの多いシンポジウムでした。