ツツジの花 ~司法試験の思い出~勝負事は最後まで分からない

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4月下旬からGWにかけてツツジの花が見頃を迎えます。
 私の大阪の実家の庭には、横が5メートル以上、高さが3メートルくらいの大きさでツツジの花が咲きます。

 弁護士になって、この時期に大阪に帰った時に、ツツジの花を見るのが楽しみの一つになっています。
 しかし、20歳代の頃、大阪で司法試験の受験勉強をしていた頃は、このツツジの花をみて「綺麗だなあ」と思う余裕もありませんでした。近所のおばちゃん達が「晴夫くん、井上家のツツジは綺麗やなぁ。私ら毎年楽しみにしてるねん。」と声を掛けてくれますが、私は「はぁ」と言った感じでした。

 実はGWの頃は、司法試験の直前期でした。私が受けていた頃の旧司法試験は、5月の第2日曜日母の日が択一式試験(3時間半60問のマークシートの試験)で、それに合格した受験生は7月の海の日前後の論文試験(一日3科目ずつ合計6科目、2日間朝から夕方までの試験)を受験でき、論文試験にも合格した受験生は、10月下旬の口述式試験(3日間合計5科目の法律に関する口頭試験。面接ですが会話の内容は全て法律の質問)を受験でき、その3段階をクリア出来て、やっと司法試験に合格でした。  GWは、択一式試験の直前期で、とにかく一生懸命勉強し、同時に体調も整えていく時期なのですが、一日置きくらいの割合で、各予備校の模擬試験があり、その結果に、してはいけないと分かっていても一喜一憂してしまい、精神状態を狂わされていたものです。

 私は、マークシートの試験が大の苦手だったので、模擬試験の結果や周りの噂などに過剰に反応し、不安を掻き立てられ、精神状態がおかしくなり自滅することが多かったです。当然、ツツジの花など目に入っていませんでした。
 結局、苦手な択一式試験を突破した方法は、とにかくがむしゃらに勉強し、試験直前期は友人知人など外部との関係を一切断って、父親以外の誰とも会話せず、仙人のように自分の世界で無心になることでした。外部の者にペースを乱されたとかの言い訳も出来ない状態でしたから、とにかく余計なことは何も考えずに、目の前のことを一つ一つこなしていきました。

 こうして、司法試験に最終合格した年の私は、周りとの関係を断ち、とにかく仙人のような生活と精神状態を保ちました。
 
 しかし、この年の私も実は、「甘かったなあ」と思うことがありました。
2010年1月26日付のお知らせ欄にも記載しましたが、論文試験の時のことでした。
https://www.inoue-haruo.com/info/info_dsp.cgi?mode=0&no=00012

 私は、マークシートの試験に比べて、比較的論文式の試験は特意だったこともあり、二日間あった試験のうち、初日の出来が、自分ではかなりいい感じで、初日が終わった時点で、既に合格を意識しました。
 ところがここに落とし穴がありました。初日が終わった夜、合格を意識し興奮してしまった私は、全く眠れなくなって一睡も出来なかったのです(言い訳をすると、泊まったホテルの隣の部屋からカップルの声がしまして…)。初日の疲れで身体はかなり疲れていたにもかかわらずです。
 翌日、私は、前述のお知らせ欄で述べました通り、フルーツポンチのヨーグルトがけを食べ、ユンケル皇帝液を2本飲んで乗り切り、体力的には何とかなった訳ですが、精神的には、一睡も出来なかったことに対する焦りをどこかで感じざるを得ない状況でした。
 試験の結果は、初日の貯金で何とか合格できたのですが、「勝負事は、試合が終わるまでは結果を意識してはいけない。最後まで無心でやりぬくこと」の大切さを痛感せざるをえませんでした。

 論文試験での教訓は、最後の口述試験でギリギリのところで生かされました。
口述試験は、3日間かけて、民事系2科目(民法と民事訴訟法を各15分ずつ)、憲法1科目、刑事系2科目(刑法と刑事訴訟法を各15分ずつ)というスケジュールで行われたのですが(科目の順番は人によって違いました)、私にとって正念場は最終日の刑事系でした。

 刑法の口頭試験(面接で法律の質問に対して口頭で答える)を順調に終え、司法試験の最後の最後、刑事訴訟法の口頭試験に移りました。「ここさえ乗り切れば司法試験に合格できる!」という場面でした。
 刑事訴訟法の質問に答えていると、椅子に座りながらも段々と上半身が右に傾いていくのです(汗)。恐らく60度くらい傾いていたと思います。自分でも分かっていたのですが、上半身がひとりでに傾いていくのをこらえることができません。それでも必死で質問に答えました。さらに、途中で、気を失いかけました。何だか訳が分かりません。しかし、ここで気を失って倒れてしまえば試験続行不可能で、私は不合格になってしまいます。とにかく、必死で気を失わず、上半身が傾いていても、必死で質問に答えたことだけ覚えています。
 最後の質問が終わった後、試験管の先生が、にっこり笑って「お疲れ様。」と声をかけていただき、私は、その瞬間司法試験を通過したのを確信しました。
 刑事訴訟法の最後の15分間は、何だか不思議な15分間でしたが、自分なりに「勝負事は最後まで無心でやること」ということを実践でき、火事場のクソ力で乗り切れた経験でした。

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 司法試験を通じて、「勝負事は、最後まで結果を意識せず、無心でやる」ということを分かったつもりでしたが、今の生活でも結局はなかなか実践できていないことが多く、自分なりに反省する毎日です。
 今日は、大山アークでの月例杯に参加しました。今回は一人で参加し、初対面の方々と一緒にラウンドさせていただきました。他流試合をして精神面を鍛えるためです。
 
 前半は、5アンダーで終え、同伴したハンデ10台前半の方々と似たようなスコアになり、その方々からは、「あんたハンデと実力があってないんじゃないの。優勝間違いないわ。」と言われたのですが…
 何と後半になり、信じられないプレーを連発(涙)。後半最初のホールでシャンクのOBを叩いたのを始め、最後の4ホール中3ホールでOBを叩き(殆どシャンクまがいで、中にはフェアウエイからのアプローチが真上からやや右前方に上がりOBというのもありました。自分では何が起こったのか全く分かりませんでした)、終わってみれば、アンダーですらまわれませんでした。

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 結果を気にしていたつもりはありませんが、調子が悪くなると、ついついスコアを数えてしまい、結局それが、無意識のプレッシャーにつながり、身体を動かなくさせたのでしょう。
悔しくてたまりません。
 「勝負事におけるプレッシャー」に何とかして討ち勝ちたいものです。というか、プレッシャーを楽しめるような精神状態にならないといけないのかも知れませんね。

 今日は、まだまだ自分が未熟であることを痛感した次第です。

ツツジの花 ~司法試験の思い出~勝負事は最後まで分からない